おひとりさま市場が伸びているデータはすでにこのブログで紹介しました(「『ソロメシ』市場調査の情報まとめ」 https://www.solomeshi.jp/solomeshi-market-research/ )。今回は具体例として、おひとりさまの割合が増えている『恵比寿 土鍋炊ごはん なかよし』に注目。同ブランドで7店舗を展開している株式会社 四季の台所の代表取締役、洲之内克氏にお話を伺いました。

自宅近くで食べて帰る夜のおひとりさまが増加中

「ランチタイムでは平均的にお客様の35%ほどがおひとりさまです。週に3〜4回くらい来店していただく常連様も少なくありません。ディナータイムのおひとりさまも増えていて、とくに恵比寿や目黒のお店で顕著。駅の近くでひとり暮らしをしている方に利用していただいているようです。おそらくですが、職場のあるエリアで食事してから電車で帰るのではなく、自宅の最寄り駅で食べて “あとは帰るだけ” という状況のほうが気持ちが楽だからではないでしょうか。とくにおひとりさま専用のメニューを提供しているわけではないんですが、夜でも定食を出しているので、おひとりさまでも利用しやすいと思います」(※コメントはすべて洲之内克氏)。

美味しいごはんがお替わり無料なのも人気の理由です『恵比寿 土鍋炊ごはん なかよし』は土鍋で炊き上げたご飯とともに家庭料理を楽しめるのが大きな魅力。美味しいごはんがお替わり無料なのも人気の理由です。店舗により、ランチは定食、夜はコースや一品料理やお酒も楽しめるメニュー構成になっています。(基本は定食屋、店舗によって夜は居酒屋業態でやっています)

「オフィス街にある丸の内店でも夜のおひとりさまが増えている印象です。夜の定食をこれまではランチと同じ内容にしていたのですが、もう少しきちんと食事を楽しめるように、少し凝った刺し身の定食を1500円以内で提供するようにしました。その結果、夜もおひとりで来ていたいただける方が増えてきたようです」。

回転率を意識しつつ、女性の入りやすいお店も意識

「飲みに来る方は飲み来るし、食べに来る方は食べに来るというように、お客様によって『なかよし』の使い方が異なっているようです。食べにも来るし飲みにも来るという方は少ないという意味です。正直なところ、夜に限ってはおひとりさまの客単価はけっこう下がります。ただし、食事だけで帰る方が多いので、回転率は高くなります。男性はとくに食べるのが早くて15〜20分程度。回転率だけで考えると男性客が多いほうがいいのかもしれませんが、女性が入りやすくすることで男性も入りやすくなると考えていますので、女性が入りやすいお店を意識しています」。

女性がお1人でも入りやすい居酒屋として認識されるために、清潔感だけでなくイメージも重視しているそうです。
「器などにも気を使って清潔感を重要にしているのは当然ですが、女性がひとりでいる時に誰かに見られても恥ずかしくないようなお店のイメージも大切。『スープストックトーキョー』のようなおしゃれなお店ならぜんぜん恥ずかしくないと思いますので。おひとりさまの男女比は半々くらいですが、女性が増えてくれたら目指している方向が合致しているということになるので安心できます。各店舗の店長が女性向けにさっぱりしたメニューを考えることもありますし、女性が好きな食材を使った小鉢などを充実させたりもしています。やはり、サツマイモ、ジャガイモ、カボチャを使った料理が女性には人気ですね」。

定食を提供する居酒屋のベースにあるのは自身のサラリーマン経験

四季の台所の代表取締役、洲之内克氏が外食産業に足を踏み入れたのは15年ほど前のこと。それ以前はいわゆるサラリーマンをしていたそうです。
「飲食店でしか働いたことがない方はおそらく、一般的なサラリーマンが日常的に何を食べているか想像しずらいのではないでしょうか。飲食店の食事と言えば賄いですから。私は普通の会社員をしていた経験がありますので、感覚的にわかるんです」。

「ひとり暮らしのサラリーマンがひとりで食べるものと言えば、牛丼、カレー、ラーメン、コンビニや弁当屋さんのお弁当など。でも当然、今日の夜は少しちゃんとしたものが食べたいと思うこともあります。そんな時に選ばれるように、1000円とか1500円で焼き魚定食を用意しておくだけでもけっこう需要があるんです。ちなみにうちでは『鯖の塩焼き』や『肉じゃが』といった定食が定番的に人気。旬の食材を使用した『季節のおすすめ定食』が月間の注文数で1位になることも多いですね。毎日来店してくれる方が飽きないように、限定の定食もご用意しています」。

お店の状況によってはお酒だけでなく食事も提供するのがベター

おひとりさま向けの食事に需要があるなら、居酒屋やそれに近い業態のお店は食事も提供すべきなのでしょうか。
「お酒が飲めて大勢で宴会ができるだけでなく、おひとりで食事もできるお店にするかどうかは、立地条件やメニュー構成次第だと思います。ただし、食事の提供が実現できれば月〜木曜、土曜と日曜も売上が安定します。金曜日の夜が混むであればおひとりさま対策は必要はないでしょう。実は『なかよし』でも、金曜日の夜は定食の提供をストップしている店舗があります。お店の状況に合わせ、いちばん利益が上げられる方法を突き詰めることも重要だと思っています。その意味では、予約でいつも満席になっているお店にひとりさま対策は必要ありません。ただし店内が寂しくなるタイミングがあるなら、おひとりさまの食事にも対応して回転率を上げた方が得策かと思います。すでにお客様がいるお店のほうが、他のお客様が入りやすい雰囲気になりますので」。

「うちは飲み屋なんだというこだわりがあるかもしれませんし、おひとりさまが増え過ぎて常連さんが入れなくっては困るという懸念もあると思います。食材のロス、オペレーション、値段設定のバランスなどを考えてると食事のみの提供が難しい場合もあるでしょう。ただし、これからのことを考えるならひとりで食事ができる店にしておくことがベターだと思います。お酒を飲む人が減り、食事をするおひとりさまが増えるからです」。

今後も夜に食事するおひとりさまの需要は増加していく

「おひとりさまの需要は今後も増えていくと考えています。私が就職活動をしていた頃、30代で独身という人は周りにあまりいませんでした。それから10年後、転職する頃には自分の同期や先輩が独身なのは当たり前になっていました。今はもっと普通で、40代の独身や生涯独身も珍しくありません。さらに、高齢者でひとり住まいの方も増えていますので、全世代的にひとり暮らしの方が増えています。そう考えると、夜でもひとりで入りやすい『なかよし』ような飲食店がさらに必要になるのではないでしょうか」。

ひとりで食事をする人が増えるのに加え、お酒を飲む人が減っている実感もあるそうです。
「うちの会社でも20代くらいの若いスタッフは本当にお酒を飲みません。飲み放題のコースを予約した団体のお客様でも、50〜60代と20〜30代では飲みっぷりがまったく異なります。若い世代はお酒をぜんぜん飲まないんです。上の世代は『とりあえず生!』から始まっていろいろなお酒を飲んでいかれますが、下の世代は最初から最後までウーロン茶でも珍しくありません。若い世代が飲まないということは、今後はお酒を飲まない人が増えていくということ。お酒を中心にした商売は将来的にかなり厳しくなっていくのではないかと予想しています」。

おひとりさまが多い目黒エリアではお酒の提供を控え、新店舗も計画

「定食を注文される方でドリンクもオーダーされる方はごく少数。昼も夜も同じ傾向です。夜ならごはんを食べながらお酒を頼んでも良さそうものですが、ご飯だけの方がほとんど。そこで目黒店ではお酒の提供を控えるようにして、現在は瓶ビールしか置いていません。夜もおひとりさまを中心とする食事のみの方が増えてきたので、そういう結論に至りました。結果的に、売上は以前よりも安定しています。店舗の広さや状況によるとは思いますが、狭いお店で回転率を重視するなら、そういう方法もあります」。

とりわけおひとりさまが増えている目黒には、新店舗のオープンも予定しています。
「今年(2020年)の春に目黒で新店舗をオープンするのですが、そこもおひとりさまが快適に座れるように配慮した設計になります。向かい合う必要があるカウンター席でも、距離を取ったり遮ったりすることで気まずい雰囲気を生み出さないように徹底。おひとりさまでも居心地の良い空間作りを意識しています」。

『恵比寿 土鍋炊ごはん なかよし』


ランチでは行列ができる創業40年の人気店。店名の通り、土鍋で炊き上げたご飯が大きな特徴です。そのご飯に合う家庭料理の定食に加え、夜は一品料理やお酒も提供。現在は恵比寿、目黒、渋谷、代官山、丸の内エリアに計7店舗を展開しています。
参考)株式会社 四季の台所 公式ページ: http://shikinodaidokoro.co.jp